中村恭平という男が花開くとき

広島東洋カープには中村という苗字の選手が、3名所属している。記憶に新しい、一昨年のドラフト1位で入団した広陵高出身の捕手中村奨成、昨年あたりから伸び悩んでいる若さ溢れる右腕の中村祐太、そして今シーズン中継ぎとして堂々たる投球でチームの危機を救う中村恭平だ。中村恭平。確か、7、8年前のマツダスタジアムでの中日戦で先発で登板し、前田智徳石井琢朗のタイムリーで勝ち星を手にしたような記憶がある(間違っておりましたら、謝罪させていただきます) しかし、長身サウスポーと期待を寄せられながらも、一軍の舞台で出たり出なかったりというシーズンが長かった。色々な投げ方や投球スタイルに挑戦をし、という報道をしばしば目にすることはあったのだが。そして迎えた2019年のペナントレース中村恭平が一軍に昇格してきた。本来の先発という形ではなく、短いイニングではあるが、ゼロを刻み、試合のリズムをチームに作る。中村恭平は蘇った。セ界屈指の強打者を相手に怯む様子はない。とくに、左手から投げ込まれる150km/hを超える直球は右打者の内角に決まると、見ていて気持ちが良い。その勢いは埼玉西武福岡ソフトバンクといった難敵を相手にしても止まらない。任されたイニングで、実力派の揃うパ・リーグの打者をきちんと仕留める投球で、打線の奮起を待ち、「逆転のカープ」をお膳立てする。私は中村恭平に勝利投手を獲得する日が来て欲しいと願う。そして、満員のマツダスタジアムのお立ち台に上がる中村恭平の姿をファンは心待ちにしているはずである

 かつてカープで左のエースであった高橋建さんが背負っていた「22」を入団時から伝承してきた。だが、同じ苗字の高卒ルーキー中村奨成の入団に伴い、「22」を譲る形となった。言葉には出さないが、本人には相当な悔しさがきっとあるはずだと思う。何年も前から色んな選手と混ざって暑い暑い由宇球場の日差しの下で汗を流し、腕を振ってきた。頑張れば、報われる。そう証明する中村恭平の魂のこもった投球が、私たちファンの明日への希望となり、活力となる。