中崎劇場・神宮編

雨の神宮は22時。9回、1点差で当然のごとく黄色のグラブと共に中崎翔太がマウンドに上がる。青木、山田、坂口、村上、雄平と続く好打順。カープファンなら誰しもが“覚悟”を決めたのではないだろうか。私も“覚悟”してとても速報を直視出来ず、電話して気を紛らわすに至った。先頭の青木、三振。やった。怖かった。次、山田哲人死球。菊池、會澤が当てられていたので、まあ。坂口、フルカウントから四球。ヤバイ、ヤバイ。“覚悟”できていたはずなのに身がすくむ。そして続く村上、三振。どうやって三振に斬ったのだろうか。小さくガッツポーズ。次も恐ろしい雄平。案の定、歩かせた。ツーアウト満塁。絶体絶命とはこのことだ。面白おかしくなってきて、笑いが止まらない自分が居た。迎えた奥村を追い込み、三球三振の文字がディスプレイに表示される。一番メジャーな「野球速報」のアプリを使ったことのある人はわかると思うが「三振」と「ホームラン」の表示に時々、惑わされることが多々ある。三振を知った私は、安堵で緊張の糸が解け、社会に出る準備にと、ニュースに目をやり、一日を振り返る。

 悲しみや苦しみの多い世の中で、遅い時間まで野球が楽しめる。長いシーズン、当たり前のように抑えて、当たり前のように勝つ試合ばかりではない。日々どこでどういうことが、あるか分からないけれど、ありふれた生活に感謝したい。中崎翔太投手はじめ、皆さま今日もご苦労様でした。