終わりは始まり

 今年の5月、平成が幕を閉じ、令和の幕開けとなった。ひとつの時代の終焉は実にさみしい。例えば、進学による家族や友人との別れや自分が年を重ねることによって変化する過去の自分との決別。いくら自分の財産となって身に刻まれるとしても、こういった事柄には淋しさを覚えるのではないだろうか。

 今日の昼頃、高卒ルーキー小園海斗昇格の情報が舞い込んできた。これは、もしや。。という予感はしたが、まさか、決断を下すとはー。

これまで635試合連続でフルイニング出場を続けてきた田中広輔がスタメンを外れることになった。今シーズンは春先から、かなり厳しい成績でファンからも不満を露わにしたような声が上がっていた。いざスタメンから名が消えると、急にセンチメンタルというか、ブルーというか、ほかのファンの反応を静観するすべしかなかった。本当は私も、この決断を恐れていたのかもしれない。そして1番遊撃手として出場した小園海斗の初打席、2ストライクか左翼へ鋭いヒット。答えは出たかのように思った。投打が噛み合い、6-0という優勢の試合展開で中盤に差し掛かり、リリーフの一岡、中村、レグナルト、ひいては守護神フランスアまでが精細を欠き、6-6の最悪な展開に。最終的に會澤翼がサヨナラヒットを放ち、終止符を打って勝利したが、自慢の継投が打ち込まれた精神的ダメージは大きい。継投は言うまでもなく、拙攻を減らせていれば、もっと楽に勝てた試合である。8回、失点には繋がらなかったものの、苦しい場面で小園がエラーをし、ピンチが拡がってしまった。今までカープの遊撃手は田中であった。エラーもあるとはいえ、マウンドに行き、よく、投手に声をかける、という話を耳にしたことがある。今日のこの7回からのドタバタ感は「彼」の不在であったのだろうか。

 先発として役割を果たした床田も、自身の勝ち星が消え、悔しさがあったと思うが、フランスアはじめ野手陣を凛々しい顔つきで向かい入れた。そして何より、試合終了後の田中の明るい顔つきに、どこか安堵した。これまで蓄積した精神的な疲労を癒し、新たな田中の挑戦を応援したい。カープは終わらない。昨日も今日も明日もこれから先も。屈辱や栄光といった苦楽の詰まった歴史を背負って戦い続けるからである。

 

何もかもが嫌になっても

 とうとう不振にあえぐ中崎翔太が出場選手登録を抹消される見通しとなった。今期の中崎は“中崎劇場”と地元紙に書かれるほど深刻な状況であり、我々ファンから見ても不安定感は否めなかった。3度連続で胴上げを経験した“功労者”に二軍行きの決断を下すことは、難しいものであったと思う。何事も「変化させる」ことに、抵抗があるだろう。学校や職場で、自分の置かれる状況が変わると、少なからず誰もが戸惑いを感じるはずである。プロ野球選手の世界は分からないが、実績や名前に囚われて、代えたくても代えられない事情というのが、恐らくあると思う。首位を読売ジャイアンツに譲った今、不調の中崎翔太を抹消する措置をとった。そして、同じく不振の田中広輔をあえて?(意図が分からない)1番に戻した。首位を陥落したという変化に何らかの変化を起こそうという首脳陣の思惑はなんとなく伺えるが、いかんせん遅い気がする。ただ、8番センターで出場した高橋大樹の起用は光っていた。結果がでなければ、地獄。結果が出れば、天国。プロの世界における“決断”は、かなり難しいものなのではないか。

 日本生命セ・パ交流戦、はっきり言って嫌である。かくいう私も苦しい苦しい試合を、テレビや野球速報アプリで観戦するか否かという“決断”に毎試合迫られている。それでも何だかんだと変化を恐れて、無心でカープを応援している私が、居る。

熊敗れ、鯉首位落ち

 まず、ACLのラウンド16の1戦目をアウェイで戦ったサンフレッチェ広島から。先週金曜日のリーグ戦からハイネルを除くスタメン選手全員が連続してスタメンに抜擢。金曜日に良い試合をしていたため、ワクワクしていたが、疲労もあったためか、前半からパスのミスや判断が悪い場面が目立ち、失点を許す前半戦に。後半はやや守備面で粗さが出てしまい、終了間際にボランチ稲垣祥が2枚目のイエローカードで退場。運動量が求められる中で連戦の中、よく頑張っていると思う。それ故、微妙な判定での退場劇に不満が募る。しかし、サンフレッチェ広島ACLになると退場者が出るのだろうか。2014年の水本裕貴にしても、今日の稲垣にしても。試合全体を通して思ったことは、動きに今ひとつ躍動感を感じられなかったこと、パトリックをもっと活用して欲しかったこと(前半からチグハグな攻撃であった)である。城福浩監督の決めたメンバーが全てではあるが、控えに回る選手のアグレッシブな動きも見てみたかったという思いがある。

 だが、まだホームでの試合が残っており、アウェイでの試合かつ数的不利の中でも失点を「1」で抑えたと無理矢理ポジティブに捉えることはできる。次の試合での巻き返しに期待するしかない。

 広島東洋、どうしようもない。やはり、4番鈴木誠也に頼りすぎて、彼が当たらなくなると、攻撃に光が閉ざされる感じがある。そして毎度のごとく、田中広輔の打席、中崎翔太の投球に憤激してしまう自分が居る。私は、カープファンなのだろうか。春先の大型連敗、交流戦のぶっちぎり最下位。そう考えるとよく首位に立っていたと思う。負けたときこそ、ポジティブに無理矢理考えることが、大事だと野球とサッカーに教わった1日だった。根がネガティブなので、負けた日は結構満足のいく文章になるのは、内緒である。

魅惑の左腕リレー

 カープが、勝った。日曜日の夜にしてこの爽快感は、何だろう。カープが日曜日に勝つと月曜日の訪れがさも愉快なものであるかのような錯覚に陥るのが、鯉を愛している者の性なのではないだろうか。 

 今日は、なんといっても投手陣。なかなか打てない試合が多い中、本当によく踏ん張って我慢して投げていると思う。立ち上がりこそ不安定ながら試合を作った先発のジョンソン、7回を今旬の男、中村恭平。8回はレグナルト、9回にフランスアという助っ人コンビの継投。登板投手全員がサウスポーという稀に見るリレーで4-2という僅差の試合をものにした。雨の日のジョンソンは皆さんご存じの通り、精細を欠くことが多い。この日は立ち上がりから慎重な投球っをしていたといえ、球数も早いイニングからかさんでおり、「ブルペンデー」になりそうな予感はあった。ただ、前回登板で5回で降りていたことと指名打者制があるという事情もあり、意地の続投。6回を2失点にまとめる投球。まだ本調子とはいえないであろうが、6勝目。今年も頼む。

 楽天先発の岸孝之に異常なまでに相性の良いカープ打線。この日は久しぶりの二桁安打。復調は喜ばしいことであるが、代わりに出てくる選手のバッティングに注目してみると、坂倉、曽根、野間。三振を喫する。代打の難しさや普段と違った相手との対戦のやりにくさはあると思うが、日本シリーズなどの短期決戦では通用しないはずである。そこを乗り越えていくことが交流戦の教訓(まだ終わっていないが)だと信じたい。

 金曜日に期待の左腕・床田寛樹がめった打ちされ、涙の降板。先日不甲斐ない投球で登録抹消となった野村祐輔やアドゥワ誠も同様にパ・リーグ破壊力の前に登録を抹消となった。中崎翔太も苦しい投球が続き、自らの役目を事実上譲ることとなっている。4連覇に向けて、変化も必要であるが、現有戦力の持続も必須であうと思う。今日は先輩左腕4人が床田の仇を見事に討った。巨人を筆頭にセリーグのどこの球団も競った試合をしており、負けが込んでいるカードの続くカープも当然、気を抜くわけにはいかない。明日から月曜日が始まるが、野球の勝敗で気分のムラなく家庭で過ごせること、この結果によりカープファンのお父さん達が気分良く過ごせること、そしてカープファンに育ててくれた私の父親に感謝したい。

“硬い”鯉人 北の大地で何想う

 勝てる気が、しなかった。広島東洋の選手の動揺が、画面からひしひしと伝わってきた。3番から7番の野間までヒットが一本も出なかった。クリーンアップを含む中軸が、自分の打撃をできていないのが現状である。悔しいが、これでは点に繋がるはずもあるまい。それが顕著になったのが、10回表。今日のゲーム展開からすれば、ノーアウト満塁は最大のチャンスであった(のちにチャンスではなく、ピンチと称される)しかし、その機会を菊池が力無い打球のサードゴロ。後続のバティスタも同じような当たり。頼れる4番鈴木誠也も…救われた。3塁線ファウルで命拾い。落ちる球を見切って、しっかりと押し出しを選んだ。結局、次の西川が、外野フライで凡退。外野フライがツーアウトから出るとは、、プロ野球は、なんて残酷なんだ。

 答えは、その通り。抑えとして出たフランスアがその裏に、呆気なく王に痛恨の同点適時二塁打を打たれる。(私は、王のガッツポーズを見て、2つ勝ち越しておいて広島東洋を嘲笑うかのような表情だったので、地団駄を踏んだ)

後続は連続三振で断ち切ったらしい。(私は気分転換で風呂へ) 風呂から上がった私は、カープの攻撃ファンファーレと共にテレビの前へ入場。心は冷め切っていながら、体だけは燃えていた。一進一退の攻防も、広島打線が鳴りを潜め、迎える12回の北海道日本ハムの攻撃。マウンドに中崎。2016年の日本シリーズのアレを思い出してしまったファンも多いだろう。1つアウトを取って迎えた大田泰示。センターへの2塁打を打たれる(私個人的には、ベンチでしきりに興奮する清宮幸太郎の姿に腹が立ってならなかった)しかし、後の打者を抑え、見慣れた中崎との試合終了劇。実に疲れた。

 一つ言えるのは、広島東洋も結果こそ悪いが、打撃の後少しの部分が足りないだけで、中継ぎ投手の奮闘もあり、接戦の試合ができている。そこは、良い点であろう。今大ブレーキにある打線は、早急に先発・リリーフ陣を援護してほしいと心から思う。(それから、埼玉西武もなぜ簡単に巨人に負けるんだ。それが、一番ムカついた)マァ、ああだこうだ言うのもあれなので、この辺で。

 さて、明日はサンフレッチェ広島がホームゲームを湘南ベルマーレと激突する。奇しくも、前節はカープと同じ札幌ドームで北海道コンサドーレ札幌に無様に嫌な負け方をして、悲しい気持ちになった。明日の一戦も、もう落とせない。中断期間で、立て直せているかという重要なゲームなので、カープ交流戦に嫌悪を覚える皆さん、是非エディオンスタジアム広島へ!

「5」の中に見た光

 初回に野村祐輔が、まさかの5失点。一つのアウトを取るのに労苦し、結局49球という膨大な球数を投げ初回でノックアウト。慣れない北海道での試合、昨年も苦戦した日本ハムファイターズとの試合、この時点である程度勝負はあった。いくら逆転のカープを信じて応援する、といえども見ている方も、毎試合こういう展開になると、精神的にしんどくなるだろう。私は、一眠りすることに。起きてみると、菊地保則が清宮幸太郎を三振に斬っていた。大ピンチだったらしい。野村が降板した後に投げた島内が撒いた種であったが、島内颯太郎も好投をしていた。DH制で、ワンサイドゲームも十分に考えられる交流戦で投手が不足することもあるだろう。そこでパ・リーグを知る菊地保、若さ溢れる遠藤淳志や島内の存在が頼りになるはずだ。

 打撃面も、実に淡白な感じがしてならない。セ・リーグでいえば阪神の近本や糸井。パリーグでいえば、日本ハム中島卓也福岡ソフトバンクの打者の粘っこさが、投手を乱れさせる。しかし、カープは正直な打撃が目立ち、終盤も早打ちが目立った。負けていることからの焦りなのか、追い込まれると三振の確率が上がる、という心理なのか見当はつかないが、三球三振と初級ゴロを喫した安部友裕や5回で代えられたリードオフマン野間峻祥の打席を見ていると、役割を果たせていないような気がする。5回に代わって出場し、2打席目でツーベースを放った「5」長野久義。久々の出場で結果を残し、バティスタの一発を演出した。交流戦に弱い広島を救ってくれる予感がする。当然良くはないが、どうせ敗れるのならば、新たな変化を期待して、未来の勝利に繋がる試合を見たい。5回に作ったピンチを凌ぎ、背番号5の長野がチャンスメーク。最終的に5点で試合を終えた、と考える方が腹も立たまい。なんせ、宿敵・巨人も敗れ、後を追う阪神も勝ちをこぼしたことである。

 偉そうに書き連ねてしまい、申し訳ないが、カープの勝ちが週5の生活の中では、何よりの希望であり、活力なのだ。

中村恭平という男が花開くとき

広島東洋カープには中村という苗字の選手が、3名所属している。記憶に新しい、一昨年のドラフト1位で入団した広陵高出身の捕手中村奨成、昨年あたりから伸び悩んでいる若さ溢れる右腕の中村祐太、そして今シーズン中継ぎとして堂々たる投球でチームの危機を救う中村恭平だ。中村恭平。確か、7、8年前のマツダスタジアムでの中日戦で先発で登板し、前田智徳石井琢朗のタイムリーで勝ち星を手にしたような記憶がある(間違っておりましたら、謝罪させていただきます) しかし、長身サウスポーと期待を寄せられながらも、一軍の舞台で出たり出なかったりというシーズンが長かった。色々な投げ方や投球スタイルに挑戦をし、という報道をしばしば目にすることはあったのだが。そして迎えた2019年のペナントレース中村恭平が一軍に昇格してきた。本来の先発という形ではなく、短いイニングではあるが、ゼロを刻み、試合のリズムをチームに作る。中村恭平は蘇った。セ界屈指の強打者を相手に怯む様子はない。とくに、左手から投げ込まれる150km/hを超える直球は右打者の内角に決まると、見ていて気持ちが良い。その勢いは埼玉西武福岡ソフトバンクといった難敵を相手にしても止まらない。任されたイニングで、実力派の揃うパ・リーグの打者をきちんと仕留める投球で、打線の奮起を待ち、「逆転のカープ」をお膳立てする。私は中村恭平に勝利投手を獲得する日が来て欲しいと願う。そして、満員のマツダスタジアムのお立ち台に上がる中村恭平の姿をファンは心待ちにしているはずである

 かつてカープで左のエースであった高橋建さんが背負っていた「22」を入団時から伝承してきた。だが、同じ苗字の高卒ルーキー中村奨成の入団に伴い、「22」を譲る形となった。言葉には出さないが、本人には相当な悔しさがきっとあるはずだと思う。何年も前から色んな選手と混ざって暑い暑い由宇球場の日差しの下で汗を流し、腕を振ってきた。頑張れば、報われる。そう証明する中村恭平の魂のこもった投球が、私たちファンの明日への希望となり、活力となる。